審査員インタビュー:劇場事業プロデューサーの視点
数々の公演事業を メディアとして手がけ続ける プロデューサー!
武田 浩治
大阪は日本のストリートダンスのメッカ! ここから万博に向けてさらに広がる環境を。

お芝居は2時間、ダンスは5秒で感動が伝わる!
―武田さんはどういった経緯でMBS内で劇場運営を担当することになられたのですか?
 もともと83年にMBSに入社してからはラジオやテレビ番組のディレクターやプロデューサーを担当していました。それからMBSが作った劇団四季・専用劇場が、劇団四季さんが別に本拠地を作って使わなくなってしまった時、社内で「劇場を続けたいけど誰に任せるか」という話になったんです。
 その時に、もともとお芝居やミュージカルが好きだった私が手を挙げた……という経緯ですね。
―その劇場こそが「シアターBRAVA!」なんですね。
 2016年に劇場は一旦閉めてしまったのですが、また次の劇場を準備していて、今はその専任の立場になっています。
 BRAVA!を任された当初は僕も劇場運営なんてしたことはありませんでしたが、いろんな公演を招聘したり、場合によっては主催したり、自らプロデュースしたり、必死で頑張ってきましたね。自分のスタンスとしては表現者と観客をつなぎ合わせる立場、というように考えています。
―その中で、ダンスの公演を手がけられたことはありますか?
 もちろんたくさんありますよ。ダンスって一瞬で人の心を捕らえる魅力があって、お芝居が2時間かけて やっと最後の感動を呼び起こすなら、ダンスは踊り出して5秒で「すごい!」って伝わる。
 でも逆にそこから90分の劇場コンテンツにするならばどうすればいいのか? ダンスに加えてさまざま手札というか、要素や演出がないと難しい……という側面をもったコンテンツだと思っています。
―では武田さんから見て、一緒に仕事をしてみたい振付師はどのような人ですか?
 やはり他の人とは違う輝く何かを持ってらっしゃるかどうかが大きいですね。上手い下手ではなくて、曲やテーマをどう解釈してとんでもない振付や世界観をつくる、それが観ていて別世界に連れて行かれるような……。そういう才能に出会うとゾクゾクしますね!
大阪の地で次につながる場を作り続けていきたい!
―なるほど。やはり振付師にとって独創性は重要なんですね。
ただ、今あげたことが絶対の正解という訳でもなくて、先ほどの〝劇場コンテンツとしてパッケージ化する場合〞と〝振付師としてミュージカルなどに参加する場合〞は違い、他のカンパニーに関わるのであれば、どう演出家と意思疎通をして、どうダンサーを用いて意図した表現を達成するかが重要ですね。
―確かにそれぞれ必要とされるものは違いますね。
 素晴らしい才能を持った振付師の方でもダンスで90分の公演を作る際は色々悩まれると思います。仕事でご一緒する際はそういう時に私も一緒に悩みたいと思いますし、今まで も創り手とお客さんを繋ぐ目線で意見を差し上げることもありましたね。
 ですから、この夏、大阪で開催される『Legend UNIVERSE』の主旨もすごく納得できて、いわゆる〝スキル合戦〞のコンテストだと競っている目線がお客さんと違うところになってしまうこともある。そうじゃなくて、いかにお客さんを巻き込むか?そういった世界観を 持って表現される方が評価されるというのは素晴らしいですね。
―現場ごとに求められていることを判断して応える力が必要なのですね!
 それともう1つは、時代のニーズをちゃんと表現できる新鮮さというものはすごく欲しいですね。
 どんなにオーソドックスなものでも求められるものは違って、歴史の長い日本舞踊やバレエ、それこそ日本画や書道でも言えることですが、その中にも必ず〝流行廃り〟がある。
 そういった中で今の時代にちゃんと評価されるものをその人が持っているかどうかということはすごく大事ですね。  
―では、大会の大阪開催で、どのようなことが期待できるとお考えですか?
 大阪は日本ではストリートダンスのメッカであることも存じていますが、やはりこの大会をやるからにはスキル以上に「楽しませてやるぜ!」という姿勢の作品に出会いたいです ね。大阪でもダンスの先生として生活できる道はあると思いますが、大きな振付を依頼されたり、自主公演を開催するだけでは生活はできない現状かと思います。ですから大阪にいながら「では次の仕事をお願いします」と依頼できる立場の人がたくさん観に来られる機会というのは非常に有意義だと思います!
 また、2025年の大阪万博に向けてダンスを含むさまざまなパフォーマンスの需要が大きく盛り上がっていくと思います。放送局の事業部門の人間としてはパフォーマンスが半年間だけの使い捨てではなく、次につながる場を地元で作り続けていくことを考えていきたいですね!
JOB FILE
EL SQUAD 公演 『PLAY THE DARKNESS』
YouTube累計再生回数5500回以上、世界20ヶ国以上で上演された「光のダンス」を生み出したEL SQUAD。今年の9月に大阪ABCホールで開催される、彼らの3年ぶりの新作舞台公演にMBSが協力!
WRECKING CREW ORCHESTRA 2013 『COSMIC BEAT』
大阪に拠点を置く、ストリートダンスにおける舞台公演の先駆者であるWRECKING CREW O RCHESTRAの10周年公演をシアターBRAVA!にて開催。先進的な映像マッピング技術で話題を呼んだ。
談ス・シリーズ第三弾『凸し凹る』
大植真太郎、森山未來、平原慎太郎といったバレエ、コンテンポラリーダンスに精通したダンサー達による演劇やダンスの垣根を超越した身体表現の公演。大阪ビジネスパーク円形ホールにてMBSが主催。
『MBS DANCE GRANDE』
ダンスシーンの実力派コレオグラファーが集結するナンバーショーケースイベントをADHIPとともに主催。若手からベテランまで数多くのコレオグラファーが毎年作品を出展している。

Profile

1983年に毎日放送入社。ラジオやテレビ番組のディレクター・プロデューサーを経たのち「シアターBRAVA!」の支配人に就任。演劇、ミュージカル、ダンスなど数多くのさまざまな種類の公演事業の誘致や主催を手がける。2016年に同劇場が閉館した後は、新規エンターテインメント事業開発を担当。