小池修一郎 | 本戦審査員インタビュー

審査員インタビュー
作品演出力を見極める視点 /
演出賞 選定審査員

 日本のステージエンタメ界を代表する一大文化を築いた宝塚歌劇団をはじめ、数多くのミュージカル作品を手がけ続けてきた巨匠演出家、小池修一郎。

 本大会の審査参加を機にKAORIaliveやAKIHITOらを大型ミュージカルの振付師として起用するなど新たなる才能を抜擢し続けている。

 その達眼に映る、コレオグラファーの可能性とは!?

数々の興行神話を築き続ける日本屈指の巨匠舞台演出家!

数々の興行神話を築き続ける
日本屈指の巨匠舞台演出家!

演出家
宝塚歌劇団 特別顧問

小池 修一郎

PROFILE

1986年より演出家として活動開始。以後「エリザベート」など数多くのヒット作を手がけるほか、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」や、2007年「世界陸上選手権」の演出を手がけるなど日本屈指の舞台演出家として活躍。その功績が讃えられ2014年には紫綬褒章を授与されている。
※学問や文化、スポーツの分野において優れた業績を残した功労者に贈られる褒章。

「たまたまできた」では仕事にならない。
目的に対する明確なプランをもった表現を!

観る者誰もが解る明確な〝計画と結果〟を!

──コロナ禍も落ちついてきましたが、昨今のミュージカル業界の状況はいかがでしょうか?

まだまだコロナ禍を〝経て〟……とはいえないですが、公演を中止・延期せざるを得ない状況を何度も経験しながら「The Show Must Go On」の精神で演者・スタッフが一丸となってやってきました。

本当に大変な時代ですが、その分だけ真摯に向き合い、皆で支え合って作った舞台のクオリティは以前より高くなっているように感じます。

──小池先生は『Legend Tokyo』から多くの優勝者を振付師としてご起用いただいておりますが、どんな基準で選出されていますか?

演出家として振付師を選ぶときは、設定されたテーマに対してダンスを使ってどうアプローチできるかを常に考えています。

だから大会審査員に参加させていただいている時も、創る上での〝計画と結果〟が明確だと、演出という視点では評価が高いですね。

つまり「テーマ設定に対して、作品の構成をどうプランし、どう表現しているのか?」が重要です。

2014年に優勝したKAORIaliveさんの作品「No War」、2016年のAKIHITOさんの「オノマトペ」などはその点が非常にクリアでしたね。

誰もが解るほど明確に〝計画と結果〟が示されていた。

──計画性と実行能力を兼ね備えていることが必要なんですね。

「たまたまできた」ではお仕事になりませんからね。

例えば、KAORIaliveさんが優勝した翌年にフランス革命を題材とした日本初上演のミュージカル『1789』の演出を控えていました。

そのイメージが優勝作品とマッチしていたのですぐに振付オファーをしました。

また、意外性やインパクトのある面白さを求めているときは、AKIHITOさんにお願いするようにしています。

ただ、ミュージカルも色々な作品があるので、たまたま私が演出を担当した作品のニーズに適う方を起用させていただいています。

もし仮に私が作品をプロデュースする側の立場だったら、『Legend Tokyo』からもっと多くのコレオグラファーにオファーしていると思いますよ!

今を生きている人たちの価値観を反映した作品を!

──マッチする作品さえあれば、多くの振付師にチャンスがあるんですね!

もちろんです。どの振付師の作品もアマチュアのダンサーが中心でありながら、観客を感動させていますよね!?

つくり手にフォーカスし、その能力を競わせてレベルアップさせ、世の中に送り出していく。

この企画は本当に素晴らしいので、業界内外から今後さらに注目が高まっていくはずです!

──貴重なご意見ありがとうございます。では今大会はどんな点に注目されますか?

私が初めて『Legend Tokyo』を観させていただいてから9年が経ったんですね。

時代が数年違えば人間の感性も変化するもの。特にこの数年はコロナ禍はじめ、さまざまな事件やテクノロジーの進化などが大きく我々に影響を与えてきました。

首都圏では5年ぶりの開催ということもあり、今を生きている人たちの価値観がきっと作品にも反映されるはずなので、そこは見極めていきたいです。

──復活した本大会の今後に期待することはありますか?

この大会は出展コレオグラファーが自由に表現テーマを設定できるようになっていますよね?

何か共通した課題に対して作品を創るということをしてみても、コンペティションとしては面白いと思いますよ。

好きに創るより難しいですが、オーダーに対してどう応えるかもプロとして求められる能力ですし、新しいものが生まれるかもしれません。

──最後に参加者にメッセージをお願いします!

コレオグラファーもダンサーも無限の可能性を信じて、「無理かも?できないかも?」という題材にどんどん挑戦してください

ミュージカルの現場もそうですが、大勢が関われば当然トラブルやストレスはあるし非常にしんどい。

でもそれを乗り越えた先に、コレオグラファーだけじゃなく、そこに関わるダンサーも含めて、絶対に得るものがあって成長できるんです。

そこに挑める場がまさにこの『Legend Tokyo』なので、これまで観たことのないダンス表現へのチャレンジに期待しています!

このポイントを重視して審査!

自分で設定したテーマに対する〝計画と結果〟を明確に!

JOB FILE

宝塚歌劇
『エリザベート』

Photographer:Leslie Kee

小池修一郎氏の代表作とも言える名作。1996年の宝塚での初演以来、現在に至るまで再演が繰り返され、人気演目となっている。

宝塚歌劇
『オーシャンズ11

©宝塚歌劇団
Photographer:Leslie Kee

同名のハリウッド映画の初のミュージカル化作品の脚本・演出を手がける。2011年の初演以来何度も再演された人気作。

ミュージカル
『ロミオ&ジュリエット』

撮影:坂口潤哉

小池修一郎氏による話題作。振付師にはKAORIaliveやAKIHITOなど歴代『Legend Tokyo』優勝コレオグラファーを起用!

ミュージカル
『1789』

©宝塚歌劇団

フランスの人気ミュージカルを潤色・演出。2015年に宝塚歌劇団版、2016年・2018年には東宝版が上演され、大ヒットを記録!

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